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玉虫色の映画。どの人物に自分を重ねるかで、感想が違ってくる。

アンディに共感する人は、希望を失わないこと・コツコツ努力すること・生きるために適応すること・それでも芯となる自分は見失わないことなど、よくある人生の教訓に感動すると思う。

でもこれができるのは、よほど強くて自分を信じ、愛する能力を備えた人間だろう。
そう、囚人とはまるで正反対の人間。
アンディには泥臭さがなく、飄々として要領がよく、自分を信じて努力を楽しむことができる。最後に笑ったこの主人公に私が感じたのは「嫉妬」に近いものだった。

人は簡単には変われないと思う。
人生に予想外のトラブルやチャンスが巡ってきたとき、それは変化への誘い。人生の岐路。

アンディにはトラブルが、囚人にはアンディという異質な人物を通して何かを学ぶチャンスが訪れる。アンディも囚人も、普段なら交わるはずのないレベルの人間と関わることになる。

アンディは、トラブルに負けず、腐らずに生き延びる。闇に染まらず、最終的に自分の元いた光の世界へ帰っていく。

ブルックスは、チャンスをいかして光の中で生きることができない。ブルックスもまた、ある意味、自分の元いた世界におさまっていく。

トミーは、変わろうと努力はする。でもその努力は表面的だ。自分はどうせダメだという心の闇に勝つことができない。

私が一番心を動かされたのは、レッドの勇気。

アンディが腐らなかったのも素晴らしいが、それはアンディが苦労して手に入れた強さかどうか私には分からないし、映画の中でも描かれていない。

アンディは最初から強かった。
アンディが負けなかったのは強かったからだ。
ひねくれた意見と思われるだろうが、幸せに育った人間は強いのだ。アンディはエリートだ。アンディが希望を持ち続けコツコツ努力ができたのは、光を知っているからだ。
ある意味で当然だ。
人は簡単には変われないからだ。

でも、レッドは違う。
光を知らない人間が、希望を信じること。自分は終わったと感じている人間が、自分の人生の続きを夢見ること、、それがどんなに恐ろしいか。どんなに難しいか。

レッドは自分に勝った。ブルックスと同じだと思っていた自分を、変えることができた。

アンディのような人間になれたら、もちろん素晴らしいと思う。強い人間は自分の人生を全うするだけでなく、その道中で人に光を分け与えることができるからだ。

でも、私には目眩がする程に遠い。

囚人のように腐りきった人間が観たら、ヘドのでる映画だと思う。

トミーのように、努力しているつもりの人間が観たら、絶望の映画だと思う。

何の疑問もなく主人公に共感できる人は、幸せな人間なんだろうと思う。