「情熱の階段」

現在スペインで唯一の日本人闘牛士として活動している濃野 平の自伝。
若いとき闘牛にあこがれて28才でなんの伝も泣くスペイン語もろくにわからないまま単身スペインに渡り闘牛士に経の道を目指した作者。
とはいえスペイン人でさえ闘牛士になるのは相当大変なのに日本人だとそれは言うに及ばない。
何度も何度も挫折する姿は読んでるほうの気持ちが折れてくるほど。
トップマタドールは一試合で数千万稼ぐそうだけどそれは一握り中の一握り、それ以外の闘牛士は自腹を切ることが多くとにかく金がかかる。まず本物の牛を使っての練習もろくにできない。
牛って練習であっても1回闘牛士の動きを知ったら対応してしまうので一度練習に使った牛は殺して食用になったりするって。つまり練習するには牛一頭購入しないといかんってこと。
だから上にいく闘牛士は二世や金持ちの息子が多くなる。
あと闘牛士同士の足の引っ張り合いや騙しあいもかなりのもんだと。
スポーツのように強ければ、上手ければいいというだけではないとこが難しい。
そんなスペインの闘牛事情なんかもこれを読めばよくわかる。
そして現実の厳しさもよーくわかる1冊。


もし、あなたの家族・友人・同僚が、突然「俺、闘牛士になりたい」と言ったらどうしますか?
鼻で笑いますか。できっこない、と決め付けますか? バカなマネはよせ!と止めますか?
これは、100人中おそらく99人が実現不可能と思うであろう夢を叶えた著者の実話である。
しかも20代後半という決して若くない年齢から始めたというのだから驚きです。

うだつのあがらないフリーターの青年が、テレビ番組でたまたま観た闘牛に憧れ、その世界に
飛び込んでしまうノンフィクションストーリー。闘牛というものは有名であるが、プロになるには
どうするのか、どんな世界なのか。おそらく日本人はほとんど知らない未知の世界だと思います。
それは著者である彼も同じだったと思います。
しかし、そこは予想以上にコネや金を必要とする厳しい世界。言葉の壁、そして何も持たない青年は
人々の力、そして何より本人の努力で道を切り開いていきます。
ドラマティックな展開も多く、スペイン人でもやらない危険な賭けにも挑戦するところなどは
「こんな日本人がいるんだ」と感動すら覚えます。


日本人がたった一人でスペインはウエルバへ渡り、
言葉もままならない状況から闘牛士を目指す、
情熱の実話です。
無謀とも言うべき挑戦の過程を、
本人が時系列に沿って語り進んでいきます。
渡西当時は相手の言葉が理解できない状況なので、
本人による憶測を交えながら、
スペイン人との交流も描かれています。
現地人の文化や考え方は、
当時のナマのものなんでしょうから、
郷土の文化を知りえたという意味で、
興味深い内容ではありました。
著者の闘牛士への挑戦には、
勢いや情熱や夢と言った、
裏づけのない「気持ち」が前面にでていて潔いです。
ただし、本としては、ごめんなさい。
人の挑戦にたいして批評するのは非常に不本意ですが、
本として、本書より先にオススメしたい本が、
控えめに言っても、正直たくさんあります。
闘牛士を目指す若者にとっては、
間違いなく本書がバイブルになるはずです。