>>457の続き。
租借権という言葉は一般人に誤解を招くので補足しておく。
租借という語は、国語的には条約によって国の領土を借り受けることを意味する。
しかし近代史の「租借」は長期間にわたる内容であり、実質的には領土割譲のことである。
だから近代史の「租借」という用語は、国語的な意味とは異なるのである。

20世紀初頭は、欧米列強は清国各地を租借し、それを契機としてイギリスは清国南部へ、フランスは清国中部へ、ドイツは清国東部へ進出(侵略)した。
ロシアは三国干渉によって日本に放棄させた旅順・大連を租借し、満州に進出(侵略)したのである。
このように清国は欧米やロシアの植民地になりつつあったのである。
当然、帝国主義諸国の間でも利害関係が生じ、
ロシアの南下政策を恐れたイギリスは日本と利害が一致し、日英同盟が締結したのである。
そういう流れの中で日露戦争が生じたのである。

ところで清国は一方的な被害者であったのかというとそうではない。
日本と清が朝鮮という魚を釣ろうとしている有名な風刺画が示しているように、
清も帝国主義的な態度を示していたのである。
そういう中で、朝鮮では現状のまま清との関係を維持しようとする勢力と、日本と接近して近代化を優先する勢力とが激しく対立することとなった。
そうした朝鮮の利害をめぐる争いが日清戦争を引き起こしたのである。
戦争に勝った日本は後に韓国を併合し、韓国の近代化をもたらしたのである。
韓国併合の国際法的評価は分かれるが、有効説が通説である。
しかし、日本政府は多くの地主から土地を奪い、安価で日本人の分け与え、土地を奪われた人を満州や日本へ事実上移住させたり、
学校では朝鮮史教育を禁じ、日本史や日本語を使うことを強制するなど、極端な政策が人々の反感を買ったのである。

要するに世界の帝国主義的な流れに日本は巻き込まれた側面があり、
東京裁判に見られるように勝者が善で敗者が悪であるというのは政治的背景の強い単純な二分化である。

そういう中で勝者の意向に沿った憲法が制定されたのである。
当初の政府案は大日本帝国憲法を手直ししたもので、統治者も天皇であった。
しかし、GHQはそれらを拒否し、自ら作成した憲法を日本政府に提示し、これを基礎として憲法が制定されたのである。
だから押しつけ憲法論は根拠がないわけではない。
しかし、日本初の男女普通選挙で国民が選んだ代表が憲法案を可決したのであり、
かなり上の方でも少し触れたが、憲法自体は有効に成立しているのである。
仮に無効であったとしても憲法を無効とする権限はどこにもなく、実務上は有効なものとして扱わざるを得ず、無効論はナンセンスである。