発祥から今日へ
荒らし行為はその多くが、荒らし書き込みがしやすいことから、電子掲示板やブログなどに対してのものだ。
掲示板"荒らし"やチャット"荒らし"などのように、Web上のコミュニケーションスペースにおいて、不快な参加者や書き込みに対して最初に"荒らし"と名づけたサイトは1・2チャットというチャット・電子掲示板であり、1998年(平成10年)春頃だ。"荒らし"と名づけたヒントは、たまたま入居していたビル内の「ビル荒らしに注意」と書かれた掲示物が印象に残っていたためだ。
荒らしが起こる時期は、インターネット電子掲示板の登場時期と重なる。パソコン通信の時代にも散見はされたが、当時は通信料金が無制限の従量制のみで、定額の常時接続が提供されていなかったため、参加者自らが多額の費用を支出して荒らし行為を行うのは何のメリットもないとも考えられ、少なかった。
近年は通信料の定額制の実現および普及とともに、一般的利用者による荒らし行為の増加を見ている。World Wide Webが普及する以前、ネットニュースにおいても、一部のニュースグループ(日本語のグループを含む)でコメントスパムが見られることもあった。
インターネットにおいては、1995年(平成7年)にはすでに掲示板への悪戯で意地悪な書き込みが存在していた。しかし、当時はまだ個人がCGI実行の可能なWebスペースを持てる機会が少なく、掲示板は専ら企業ベースでの情報交換や、ISPなどがサービスとして運営するケースがほとんどで、匿名状態で閲覧投稿ができる形式ではなかったことから、本格的な荒らしの被害は発生していなかった。
匿名での閲覧投稿が可能な、個人ベースもしくは小規模団体の運営する掲示板サービスがメジャー化してきたのは1996年(平成8年)に入ってからのことで、荒らしによる被害が具現化してきた時期も一致する。当時の荒らしはNetscape Navigatorのhelpファイルをコピーペーストするなど、大量の文章を投稿するものが一般的であった。これは当時の通信環境が貧弱なものであり、また閲覧する環境においても、1MB程度のテキストを読み込んだだけでウェブブラウザがフリーズしてしまう脆弱性を悪用したものと思われる。