今は馬主の時代。それも急速な格差社会の波及で、ほんの一握りの大手馬主がヘゲモニーを握る。
彼らの多くは経済社会の勝利者であり、もっとも嫌うのは負けること。
ある調教師はその馬主にリーディング・トレーナーの成績表を目の前に突きつけられ、「よくもこんな
成績でワシの馬を預かれるもんだ」と罵倒された。まさに自社の社員の尻を叩くのと同じ。仮初めにも
「師」である。当然のことながら、その厩舎にその冠名を持つ馬はすべて消えた。
調教師にとって冬の時代はまだまだ続く。ただし、今6時をさしている時計の針は必ず12時へと戻る。
ここはぐっと我慢、やれることだけを精一杯やって時節を待つより道はない。

そして、もう一つ、預かりたくない馬は預からないこと。乗りたくない馬には乗らないこと。優勝劣敗
の社会とはいえ、調教師同士の強い横の連携、調教師と騎手の縦の連携、これがない限り厩舎に春は訪れない。
今まで親身になってジョッキーを育てなかった厩舎のツケもある。目先の利益を捨てて、厩舎全体の利、
底上げを考えるようなリーダーが現れてこそ、初めて一握りの大馬主と互角に渡り合える力を持つことになる。

因みにそのアンちゃんは、近い将来、武豊を超えることになろう。