ディープインパクトの心技体 2
楠瀬 良(JRA競走馬総合研究所)
武豊騎手はディープインパクトの乗り味を、空を飛ぶようだと表現した。
 歴戦のジョッキーがそう表現するフォームとは、いったいどんなフォームなのだろうか。
それを知るべく、私達の研究所の運動科学研究室のスタッフが、菊花賞当日、京都競馬場のゴール前にカメラを据えた。

「競馬で唯一レース中にそれを撮影させてもらったのはディープインパクトだけなんです。
だから他の馬と比較できないの。」(青木 修 日本装蹄師会 競馬ブック08年9月21日号 )

企画調整室長 楠瀬 良

ディープインパクトという馬は、筆者の24年間の競馬会人生の中でも、とても異例な競走馬といえる。
というのは、この馬のことなら、たとえ目前に競馬を控えていたとしても、競馬会職員として公に馬名を出してしゃべったり書いたりしても許されるという雰囲気が感じられるからである。
それだけ、この馬が格別な存在として認知されているということであろう。
 2005年春、ディープインパクトが絶大な人気を集めることが予想されていたダービーの前のある日、研究所の筆者のもとにJRA本部ファンサービス事業部長から一本の電話がかかってきた。
「実は楠瀬君、ラジオNIKKEIに出てくれないかな。三冠レースを盛り上げるために、レース前の金曜日に特別な番組枠をラジオ局が作ったんだよ。」
「私をご指名いただけるとは光栄です。私なんぞでよろしければ、是非出演させていただきます。」と、とりあえず謙虚に答えた筆者は、
「でも、この時期ならどうしても話題はディープインパクトのことになっちゃいますよね。JRA職員がラジオで予想行為をするみたいで、まずいんじゃないですかね。」
「いいの、いいの。絶対勝つとか、馬券がらみの話さえしなければ大丈夫。」
ということでその場で出演は決まり、筆者は番組収録当日、銀座のラジオNIKKEIのスタジオに赴いた。
 中略
番組全体の8割はディープインパクトの話だったが、「JRA職員が予想行為云々」といったクレームは一件もなかった。やはりこの馬は普通とは全く異なる、勝ち負けを超えた存在だったのである。

これで他の馬も薬物使ってたと考えられるなら凄いね