ナリタブライアン、アグネスタキオン、アドマイヤベガ…
確かに怪我で引退した馬は種牡馬として短命な馬も多く、この時は納得したものだ。
しかしディープインパクトは怪我無かったではないか。グラスワンダーはあれだけ怪我をしていまだ元気である。
再び疑問が顔を出した私は、乗田主任を再び訪ねた。
「ここ10年ほどデータが蓄積され、屈腱炎の発症率と寿命が反比例しているという解析結果が出ました。もちろん統計なので例外もいますね。フジキセキなんか長寿でした。
なお、骨折などは寿命に影響がないこともわかっています。屈腱炎と死亡率が関係することの一部は、過度な柔軟性で説明できます。
過度に屈折するからこそ負担が掛り屈腱炎となる、交配時にも過度に脊椎等に負担がかかり到死となる。だからこそストライドが大きくなったり、キックが強くなったりして競走馬として優秀なのですが。
ディープも、強さの秘訣でもあるあの異常な柔らかさ、あれが原因ではないかと個人的には推測しています。」
天は二物を与えず。強い馬は必然的に脆さを併せ持っているということなのだろう。
天命。そうであれば、種付け頭数に制限などせず元気なうちに遺伝子を広める機会を最大限増やすべきだ。
それが馬たちにとっての成功法則ではないのか。
人間の安い価値観で種付け頭数を制限するというのは、馬鹿げているどころか罪でもあるのだろう。
コラム 馬耳東風 578話