18年6月 府中刑務所講演時の武豊騎手コメント

犯罪者に語った武豊騎手コメント全文

武豊騎手
「中学時代から競馬学校時代まで、体罰はありましたし自分も受けたこともあります。
その時は、自分が悪いからだと思うようにしていて、後になって考えると、あれは正しかったんだなと思うようになっていくんですよね。
あれがあったから今こうして自分は立っていられるとか、今の自分は間違ってはいない道を辿ってると思い込んでしまう。
それには、過去を美化する必要があって、それが間違っている事でも、今が良ければ結局はあの時はあれが正しかったんだと思い込むんです。

でも、暴力と強制は違うと思う。

泣きながら僕を叩いたあの先生は、その手を一生後悔するかもしれない。と大人になってから考えました。
でも僕は、あの手は正しかったと思う。
それは、暴力ではなかったからなんでしょう。

暴力というのは、気に入らない事がある度に手が出て、
やられてる側は自分が悪いと諦める子と、なんでこんな仕打ちを受けないとならないのかと考える子もいます、

どうして受けた側が考えないとならないのか、
弱い立場にあるからこそ、自分が悪い、あの人はおかしいけど我慢すれば大丈夫なのかな、いや俺は絶対に許さない、といった様々な感情がそこにあって。

暴力を与える側はどこまで考えているのか、
精神的にも未熟な子供を強制的な暴力で支配する環境がそこにあるなら、それは絶対に間違っていると僕は言いたい。

そういう経験をしてる子供が大人になったらどうなるのか、
いずれ犯罪を生み出すのではないか、子供は親を選べないし環境も選べない。
なのに大人はそういった事を何も考えていない人もいる。

幼少期の環境はとても大事で、僕は放任的な家庭環境で過ごし、兄2人がいて常に劣等感があった。
自分がダメだから、母親は愛してくれなかったのかと思うことが小学生の頃からあった。

でも僕は、騎手という職業に出会った。
この仕事で、沢山の愛情と悲しみを覚えました。

皆さんも、必ず自分に向いている職業や出会いがあるはずです。
どうか、諦めないでほしい。
僕みたいな人間が、スター騎手と言われてるんです。
僕なんて全然大したことない人間なのに。

ただ、その仕事が大好きという気持ちは一生変わらない自信だけはあります。

皆さんも、そういった仕事や出会いを見つけて道を明るく照らしてほしい。
心からそう願います。」