小説家 高千穂遙(「ダーティペア」「クラッシャージョウ」等の原作者)公式サイト日記より
http://www.takachiho-haruka.com/koujitu/koujitu05_01.htm

(略)30年以上前のことである。わたしは当時、朝日新聞の読者であった。
ある日の朝刊に、わたしが親しくしていただいていた某漫画家(※)のコメントが掲載されていた。(※注:永井豪)
その内容を読み、わたしは驚愕した。とてもじゃないが、その漫画家が言うような言葉ではなかったからである。
(略)漫画家の仕事場に着くと、かれは硬い表情で、わたしを迎えてくれた。
新聞のコメントについて尋ねたところ、「でたらめだよ。あの記事は」と即座に言い、
「朝日の記者が電話をかけてきて、『これこれに関して、あなたは古臭い因習だと思ってますよね』と訊いてきたので、
『そんなことはない。ぼくは、それはいいことで、美談だと思っている』とはっきり答えた。
なのに、新聞には正反対のことが書かれている。これはひどい。だから、さっきマネージャーに抗議をしてもらった」と、つづけた。
「それで、どうなったんです?」とわたしは問うた。「記者はコメントをねじ曲げたことを認めたよ」と漫画家は答えた。
「じゃあ、訂正が載るんですか?」「それが、だめなんだ」漫画家は言った。
「記者が言いきったよ。『誤りは認めるが、朝日は訂正を載せません』と」
「そんな馬鹿な!」とわたしは叫んだ。だが、それは事実だった。朝日は訂正を載せなかった。
わたしが朝日新聞の購読をやめたのはその日のことである。