日本にゆかりのある人などが賞を受けることに関心が集まるのは自然だ。
一方で、日本のメディアや社会がノーベル賞だけでなく、「世界遺産」などでもにぎわうことについて、
「科学・技術や理屈を重視する欧米主導の近代的な価値観に固執しているからだ」と
経済学者の水野和夫・法政大教授は話す。

「既に近代は終わろうとしているのに、欧米に追いつけ追い越せの価値観から抜け出せていない証しではないか」

ナショナリズムの観点からの分析もある。
樋口直人・徳島大准教授(社会学)は、英国人のイシグロ氏が今回、日本人と同じように扱われたことに着目。
「日本人が、序列の上位にあると考える欧米文化圏で評価された。
だからこそ『日本人』の境界をイシグロ氏まで広げて類似性や関連性を強調する。
文化的序列の中で、『日本人』の定義が都合よく容易に動くことを象徴したと思う」とみる。