国民の命が次々と奪われようとしているまさにその時、一国のリーダーが仲間の政治家らと酒宴に興じていたら…。
7月5日、気象庁から西日本各地に歴史的な豪雨への警告が発せられた。その最中、安倍首相ら閣僚は、
与党幹部ら約50人と「赤坂自民亭」(衆院議員宿舎で行われる安倍首相と党所属議員の懇親会)で宴を愉しんでいた。
同夜、西村康稔官房副長官や片山さつき議員の会員制交流サイト(SNS)には、サムアップをして記念写真に応じる参加者たちの酔った姿がアップされた。
国民の苦しみや悲しみに共感できない政治に未来はないだろう。また、自分の国に起こり得る悲劇を予見できない政治家には為政の資格もないといえる。
首相や党派への好き嫌いではない。国民の命を軽んじる政治は東日本大震災が起きた2011年3月11日以降の民主党政権で懲り懲りなのだ。
慌てた安倍政権は3日後に非常災害対策本部を設置し、「的確に対応していた」と応じている。また西村官房副長官も「安倍首相の陣頭指揮のもと」と繰り返している。
しかし、果たして本当にそうなのか。

実は、6年目の長期政権を迎える安倍首相にここまで嫌悪感を持ったのは初めてだった。約10年前、拙著『官邸崩壊』(新潮社)で、
安倍政権を徹底的に批判し、首相辞任にまで追いつめた時ですら、安倍首相本人への嫌悪感はほとんどなかった。むしろ、本にも記した通り、
安倍首相の周囲に集まる政治家や官僚やマスコミの人間に利用された「被害者」という意識を持っていた。
しかし、今回は違う。6年に及ぶ長期政権への過信と、国民への共感を忘れた奢(おご)りの気持ちが、酒宴を開かせ、記念写真を撮り、
それをSNSにアップするという愚行を自ら許したのだ。 そして、その愚行を誰も止められなかったのは、安倍官邸のみならず、
自民党という党派そのものの腐敗に尽きる。

https://ironna.jp/article/10211