私は「働けない子どものお金を考える会」の代表を務めています。この会は、ひきこもり、ニート、あるいは障がいをお持ちのお子さんを抱えるご家族の
家計を考える、ファイナンシャル・プランナーの集まりです。親だけでなく、お子さんの生涯、とりわけ親亡き後をどう生き抜いていくかを模索する
「サバイバルプラン」を中心に資金計画を立てるお手伝いをしています。高齢化した「ひきこもり」が着実に増えている

その活動もはや25年。四半世紀が過ぎました。アドバイスを始めた頃は、ひきこもりのお子さんの存在が世の中に認知されていたとはいえず、生活設計の
アドバイスをすること自体、奇異な目で見られることも少なくありませんでした。同時に、「親が死んだ後の話をするなんて、縁起でもないことを言うな」と、
当事者の家族から怒られたこともありました。25年という時間が流れ、「ひきこもり」という言葉が理解されるようになった今では、私たちが提唱している
「サバイバルプラン」を受け入れ、具体的な計画を立て、実行に移してくれるご家庭が増えてきています。とはいえ、それは、ひきこもりのお子さんの数が増えている
現実を表すだけではなく、後述するようにひきこもりの状態から抜け出せないまま、お子さん自身が高齢化している現実も意味しています。

親に介護が必要になった場合に備えて、親子別居のプランを立てるケースもあります。
資産の少ないご家庭は、厳しい現実に向き合わない傾向があります。「子ども自身がなんとか収入を得てくれれば……」といった現実的とはいえないプランしか
立てていないケースが多いのです。厳しい現実から逃避しても、明日や明後日の生活に困るわけでもありません。しかしそれは、いつか訪れる「親亡き後」に
ついて先送りしたまま、あるいは考えることをフリーズしたままにしているだけです。

「親亡き後」のお子さんの生活を守るためには、この先も働けない状態が続くという現実を受け入れる勇気が、何よりも重要です。資産が少ないご家庭ほど、
1日も早くサバイバルプランづくりに取りかからなくてはいけません。