>>703
・・・・・北朝鮮はブッシュ大統領に「悪の枢軸」と名指しされたことに危機感を強めていたので、
私は首脳会談の席で
「核の開発をしないで、戦争の準備をやめれば、経済的に豊かになる」と金正日氏に
直接決断を迫りました。あのまま日朝交渉が再開されたら、
対話のなかで拉致問題も全面解決に持っていこうと考えていました。

ところが、日本に帰ったら、「五人の帰国では少ない」と厳しく批判されました。

いまとなっては、あのときの判断は一定の評価をされていますが、当時のマスコミでは
「拉致問題も解決しないのに国交正常化なんてとんでもない」という論調が強く、
とても対話で解決を促せる状況ではなかった。
そのうち、北朝鮮も対話の窓口を閉ざしてしまいました。

だから、私が総理を辞めてからもまったく進展がないということは残念でなりません。
そういう状況を見て、「なにをやっているんだ」という被害者の怒りがあることは、よく理解しています。

日本政府は一日も早く北朝鮮とのツテを見つけて、少しでも拉致問題の解決の糸口にしてほしい。
おそらく、この本を書いている最中にも、
被害者が戻れるための努力は水面下で一生懸命やっていると思います。