話をすり替える韓国

――では、文在寅政権はどう出ますか?

鈴置: 「日本企業に賠償金を支払うよう命じた徴用工判決を誤魔化すための人権無視の暴挙だ」とか
「自由貿易体制を破壊する報復措置だ」と世界に訴え、話をすり替えるつもりでしょう。

 7月8日、文在寅大統領は「民間企業の間の取引を政治目的のため制限する動きは
韓国だけではなく、全世界が懸念している」と語っています。

 聯合ニュースの「文大統領『韓国企業に被害出れば対応』
=対韓輸出規制強化の撤回求める」(7月8日、日本語版)で読めます。

 世界のDRAMの70%以上を作っている韓国企業2社に対し、日本が素材の供給を止めれば
大問題を起こすぞ、世界を味方に付け日本を孤立させるぞ、という主張です。
ただ、これは的外れの見方です。

 日本でも多くの人が勘違いしていますが、日本政府はレジストなどの3品目を禁輸する
わけではありません。輸出許可を厳格化するだけです。

 経産省は世界の需給状況を見ながら、韓国への素材の供給を調節できるようになったの
です。世界のDRAMの需要家から文句が出ないよう、韓国の半導体メーカー2社の生産量を
コントロールしつつ、他のメーカーへの注文が増えるよう、誘導すると思われます。

――では、韓国はどうやって話をすり替えるのでしょうか。

鈴置: 日本の左派系紙がそろって社説で日本政府に措置の撤回を求めました。
朝日新聞の「対韓輸出規制 『報復』を即時撤回せよ」(7月3日)、
毎日新聞の「韓国への輸出規制、通商国家の利益を損ねる」(7月4日)です。
韓国政府は、日本の友軍を大いに頼みにすることでしょう。

 もっとも、韓国メディアが主張する「対日報復措置」に韓国政府が出るとは考えにくい。
そんなことをすれば「横流しの証拠」あるいは、そこまでいかなくとも「行方不明の核の
製造素材に関し、韓国政府が返答を避ける具体的な事実」を日本に発表されかねません。