岐路に立つLGDとサムスン 韓国パネルに迫る落城

 韓国のパネルメーカーがもがいている。
液晶パネル最大手のLGディスプレー(LGD)は2019年12月期に過去最大の最終赤字になり、サムスン電子は大型液晶パネルの生産から撤退する方針だ。
有機ELなどの先端分野に活路を求めるが、中国勢が追い上げる。かつて日本メーカーを果敢な投資で駆逐した韓国パネルは、落城の危機に陥っている。

 「この品質のままではiPhoneに採用できない」――。19年夏、LGDの有機ELパネルの技術陣はアップルの品質担当者の一言に凍り付いた。
9月の「iPhone11」発売が目前に迫ったタイミングだった。
LGDにとってiPhoneへの有機ELパネル採用は悲願だった。4年越しの悲願成就を目前に、品質に妥協しないアップルはつれなかった。

 関係者の話を総合すると、LGDの失策の要因は自社グループ製の製造装置への過信だったようだ。
同社がiPhone用パネルを量産するのは韓国北部の坡州(パジュ)工場の「E6ライン」。パネル駆動部分の形成や、発光材料の封止といった重要工程でLGグループの装置を導入し、
パネル品質や歩留まり(良品率)の向上が当初計画から遅れた。

 追い込まれたLGDは、自社製装置の代わりに米アプライドマテリアルズや米カティーバ製など外部の生産設備を活用する方針に転換した。
数カ月遅れでようやく供給にはこぎ着けたものの、品質向上に向けて設備の練度を高めるには時間が足りなかった。

 LGDは19年10〜12月期に坡州工場の生産設備の減損で1兆4000億ウォン(約1300億円)の特別損失を計上した。
徐東熙(ソ・ドンヒ)最高財務責任者(CFO)の「将来価値が帳簿価格に達しないため」という説明の裏には、アップルの要求品質を満たせなかったLGDの技術力不足があった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58061120U0A410C2X11000/