【国際】コロナ対策で浮かび上がる「監視社会」韓国 個人情報をここまでさらしてよいのか
2020年4月1日 配信

<視点>ソウル支局・相坂穣

 「感染者は○○地区、○氏(○○歳・女)。
2月9日と16日に新天地教会の集会に参加した彼氏と会った」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、韓国南東部の慶尚北道亀尾市長が
2月下旬にフェイスブックで公開した女性感染者の情報だ。
○の部分は筆者が伏せたが、市は勤務先の大手メーカー事業所名まで明かしていた。
この女性は、集団感染の発生源として非難を受ける新興宗教の信者との交際まで
公にされ、SNSに「家族も友人も傷ついた。身体より、心理面がきつい」と訴えた。

◆防犯カメラ800万台 住民登録証に情報ひも付け 

 韓国の保健当局が防疫のために公開する個人情報は、民主主義国としては異例の細かさだ。
カード使用や防犯カメラなどの記録から割り出した訪問施設などを本人らの同意なしに発信する。
私のスマホにも行政から1日何回も近隣で感染者が現れたとの緊急メッセージが届く。
感染予防の参考にはなるが、自宅アパート、訪れた店や施設の実名などが詳しく書かれた
ものもあり、断片情報を集めて個人が特定されるのではとの懸念も浮かぶ。

 当局が感染者の動きを捕捉できるのは、16歳以上の国民全員が持つ「住民登録証」の
存在が大きい。スマホを買うのにもクレジットカードを作るのにも提示が必須で、
買い物や通信、移動記録がひも付けられるため犯罪捜査などにも利用されるといわれる。
国内の防犯カメラ設置数も800万台超とされ、密度ではITを駆使した監視社会で
知られる中国をもしのぐ。