淡々と続ける義兄嫁に対して、トメは顔を白くさせてブルブルと震えた。
助けを求めるように周りを見たが、皆だんまり。私は内心怖くてだんまり。
トメがしばらく無言を貫いたので、呆れた義兄嫁はトメの手からそっとハサミを取った。
「怖かったでしょう? できなかったでしょう? 当たり前ですよ、人間ですからね」

そう言うと、義兄嫁は小さなハサミを逆手にもって、自分の喉に突き立てるフリをした。
場の誰もがひっと声を上げた。

「私だったら、「自分だったらできる」なんて言わずに、まずお椀やハサミを目の前から取り下げますけどね?」
義兄嫁が、一瞬目をかっと見開いて低い声でつぶやいたのも、すぐに笑顔に戻ったのも、私はプルプル震えながらただ見守った。めちゃくちゃ怖かった。

その食事会もすぐにお開きになった。
トメからの謝罪は一言もなかったけれど、嫁三人ともめでたくトメから敵認定を受けたので、三家とも義実家詣でにパタリと行かなくなってしまった。
今年は三家とも嫁実家に行くことになったので、1年前のこと思い出しながらカキコ。

ちなみに、事件以来義兄嫁、義弟嫁とは親しく交流することになった。
義兄嫁に、あの時は怖かったけれどかっこよかったと打ち明けると、一言、
「私、元カレの影響で、キチガイの演技は上手なの」と言って、うふふと微笑まれた。
主人である義兄には秘密なのだそうが、何でも昔交際していた相手が精神的に突飛な人で苦労したとのこと。
どこの修羅の国の人かと思いましたよ。義兄嫁には、義弟嫁ともども驚かされてばかりです。