21歳(現在) 父親が大事な話があると言ってリビングのテーブルに俺と妹を集めた。すると父親は「来年(2022年)の4月からマレーシアに移住したい」と言った。リモートワークしながらマレーシアで悠々自適に暮らしたいってね。
 俺は当然「せめて妹が高校卒業するまで妹の成長を見守る気はないのか」って怒った。
けど父親は「俺がいなくなればお前たちの負担が減るだろう」と言った。
それが俺たちを思ってるふりをしたただの言い訳だってことは明らかだった。
俺は妹の判断に委ねることにした。俺にとって父親はカスで家から消えてくれれば有難かったけど、妹はもしかしたら自分の成長を父親に見てほしいと思ってるかもしれない。だから妹に任せた。
妹と俺は2ヶ月近く真剣に話し合った。
そして結論を出した。
「父親には出て行ってもらおう」と。
日本に残れと言っても子供の言うことを聞くような人間ではないし、妹にとって自分を愛してくれない父親はもう要らなかった。彼女にとっての両親は叔父と叔母で父親は親じゃなくなってた。俺にとっても親でもなんでもなかった。父親ではなく幼い頃からずっと一緒にいた叔父と叔母と俺の方が大事だと言ってくれた。
 父親にその結論を話した。父親は俺たちの結論を聞いても何にも動じずに「ありがとう」と言った。子供たちに嫌われても気に留めてなかった。おそらく母親が死んだのは俺たちのせいだと思ってるからなんだと思う。