「武士道とかはいただけませんね。ああいう精神は、すぐ第二次世界大戦を連想しますから。
なぜ特攻隊は、あのように飛行機で身を挺してまで切り込んでくるのか? 
なぜ、ああまで主君に一方的に忠誠を誓わなければならないのか?」

ケント・ギルバート
『日米知ってるつもり大論争』より 


〈日清戦争から日露戦争、第二次世界大戦にかけて、どのような歴史的経緯があったにせよ、日本が朝鮮半島や中国大陸、東南アジア諸国を「侵略」し、悲惨な戦争を繰り広げたことは事実である。(中略)
 また、その当時の日本人の多くが中国人や朝鮮人を差別し、彼らを民族的に見下しながら虐げていた事実を、一部の日本の年配者は否定していない。第二次世界大戦の終戦までに日本が行っていたことは国家として、
そしてその国の国民である日本人として、歴史の必然であったとしても、負の遺産として顧みることは無駄ではないと思う。(中略)
 また私が推測するに、「自分が生まれる遥か昔の出来事なのに、なぜ自分が日本人として反省しなければならないのだ!と、憤慨する人も多いと思う。現代では、そのような考えを持つ日本人の方が多数派かも知れない。
 彼らに対して私がひとつだけ伝えたいのは、「世界の人々は決してそのような考え方をしない」ということだ。つまり、「そんなことはずいぶん昔の話でしょ。オレには関係ないもん!」といった日本の若者的な考え方は、
かつて日米貿易摩擦の時代によくいわれた、「日本の常識は世界の非常識」の典型例なのである。〉
〈「自分が直接関わっていないから反省などできない」と反発するのは、未熟な子どものいい分である。二十代の若者ならまだ大目に見るとしても、三十代以上の「分別のある大人」であるなら、私はそのような人には時間を掛けて諭したい。(中略)
 祖先が残した遺産はありがたく頂戴するが、歴史問題という負の遺産は相続したくないという考えは、ただのワガママである。そして困ったことに、今の日本にはワガママな大人が少なくない。〉

ケント・ギルバート
『不死鳥の国・ニッポン』より