ここは川越。
僕の生まれ育った町だ。
父はサラリーマン。
母は専業主婦だったが今はスーパーでパートをしている。
僕は・・・ 僕は司法浪人をしている。
最近ニートの親が息子を殺した事件があったが、自分はそんな愚息ではない。
むしろ将来をしっかり考えた上で働いていないので誇りに思っているはずだ。

そんな僕が最近社会に対して思っているのはネット犯罪。
そうだ、僕が弁護士になったらこの世界をフィールドに活躍していこう。
ネット加害者たちの罪が重くならないようにするんだ。
まずはネトゲのことを深く知ることが必要だと考え、パソコンのスイッチを入れる。
BIOS画面の後はいつものようにログオン画面が表示されるはずだった。

「NTLDR is missing
Press Ctrl+Alt+Del to restart.」

あれ?これはなんだ?
黒い背景に表示され動かない文字に戸惑う。
僕はそれから20分もパソコンと格闘しつづけた。
再起動すること6回。キーボードに八つ当たりをして4つほど破壊した。
マウスはふすまに突き刺さっている。
もう壊すキーボードが無い。体力も限界だ。ネトゲのイベントも終わってしまう。

「トサカにきたぜ・・・」
俺は包丁を持って台所へ向かった。

「やい!ババア!てめえパソコンに何かしたな!」
ババアに壊れたキーボードを投げつけてやった。
母の悲鳴を聞いて父が駆け付けた。
走りながら伸びてきた父の手のひらがバチンという音を鳴らし頬に当たった。
勢いでよろける。
ガスッ!ドドッ!
後頭部にキーボードの角が刺さった。

視界は回り、天井を見つめる。
それから目が覚めると病院のベッドの上にいた。
母が優しい顔で言った。
「今日からこれがおまえの足だよ。」
黒い車椅子が置いてあった。
もう一度母の顔を見る。
そして、父が目を伏せて言った。
「もう働かなくていいんだよ・・・」