1929年10月24日(木曜日)に大恐慌の始まりとなる米国株の最初の大暴落がありました。その少し前のジョセフ・P・ケネディ氏(第5代米国大統領ジョン・F・ケネディの父親)と靴磨きの少年の逸話は広く知られています。
ケネディ氏はその時までに株式投資で大儲けしていました。1928年冬のある日、オフィスに向かう途中で、靴磨きの少年に靴を磨いてもらいました。靴を磨き終わった後、その少年はケネディ氏に向かって「おじさん、〇△株を買いなよ」と言ったそうです。それを聞いて彼は「こんな少年までが株の儲け話をするなら、この後に株を買う人はいないから株式は暴落する!」と考え、すべての株式を売り払って難を逃れたとのことです。

この逸話は、ウォール街の大暴落が始まる9-10ヶ月ほど前のことなので、靴磨きの少年もその稼ぎの中から〇△株に投資して利益が出ていたのかもしれません。もしくは、ケネディ氏を喜ばせようと思って他の常連客の世間話の受け売りしただけだったのかもしれません。ただ、仮に靴磨きの少年が〇△株に投資していたとしたら、ウォール街の大暴落の前は彼にとっての「儲かる良い銘柄」だったものが、暴落後は「悲惨な結果となった無謀な投資」となってしまったことでしょう。
一方、ケネディ氏は、暴落前に全ての保有株を売り払ったので、ほとんど全ての銘柄が彼にとって“良い銘柄”になっていたはずです。

つまり、同一の株式であっても安く買って高値で上手に売り抜ければ“良い銘柄”ですし、高値掴みをしてしまったり、売り時を逃して暴落に巻き込まれてしまったりすれば、“最悪の投資”となります。このため、「どの程度の期間保有するつもりなのか?」、「どの程度のリターンを狙いたいのか?」、「どの程度の下落までなら許容できるのか?」、「どの程度投資に時間をかけられるのか」、「予想と違う値動きとなったら損失が少ないうちに手仕舞うことができるか?」という百人百様の条件によって、それぞれに合った「良い銘柄」は変わってきます。