それでは以下に全文引用

ステージ スペクトラム
五線譜で再現できぬ魅力

伝説のジム・ディッキンスンと合作アルバムをリリースしたばかりのスペクトラムことソニック・ブームが初来日。
デビュー22年にして実現したステージをひと目見ようと東京・新大久保アースダムに押し寄せたファンの数で彼の姿は最後までほとんど見えなかった(4月21日)。
4台のビンテージシンセサイザーをひとりで操作し、前半はエレクトロニックポップスの古典を淡々と再現。
機材の操作を誤ったか、バツンッと大きな音が響き渡ると、「がんばれ!」「先生!」という声援が巻き起こる。
中盤からは曲としてのフォーマットは崩れていき、音がうねるだけのドローンミュージックへ移行。
ビヨ〜ン、グワ〜ン、ブイ〜ン、グワオ〜・・・・。
延々と続くドローンサウンドはさながら海の中にいるようであり、音のかたまりに取り囲まれているような体験は不思議としかいえない。
平均律を否定し、ピタゴラス理論への回帰を訴える彼の音楽を五線譜で再現することは不可能なのだろう。
アンコールでは日本に着いてから買ったというフェンダーのギターでスペースメン3時代の「トランスペアレント・ラジエイション」を弾き語り風に演奏。
さらに鳴りやまない拍手に応えてステージに戻ってきたはいいけれど、「ノー・アイディア」とひと言つぶやいてかなり困った様子。
客席では「幸せが逃げていく・・・・」と、これはアメリカ人が流暢な日本語でこぼしていた。
結局、冒頭の演奏が再び繰り返され、主催者が終わりのあいさつをしても帰らない人が多く、楽器の片づけを写メで撮影したり、ついにはサイン会へと発展。
年代を問わない広い層のファンたちにとって特別な夜となったようだ。
(三田格・ライター)