『天皇制と進化論』p18〜19より
つまり近代の日本社会に見えてくるのは、皇国史観と自然科学という
本来的に立ち並びえない二つの知識体系を強引に両立させていこうとする
支配層の姿である。それは、大衆にとって困難な二元的思考を強いられていく
事態にほかならなかっただろう。一九〇九年(明治四十二年)生れの大岡昇平
が体験的に論じたように、「生殖と進化論について学びながら、近眼鏡をかけ
た天皇を「現人神」と信じるには、よほど屈折した思考の習慣がいる」からだ。