「囁く雨」

雨の中・・・私の勤め先の店の前に、
傘をさしてギターケースを持った彼が来た・・・
・・・私は無言のまま店の外に出た・・・

ガラス張りのショーウインドウの店の前、
通行人の男性の肩が彼に当たり、彼はよろけて左手に持っていた傘と
右手で持っていたギターケースを落とした拍子に、
そのギターケースが開き、中のギターが雨に打たれさらされている・・・

開いたギターケースの中にあった二人の記念の写真を取ると
・・・しばらく見つめた後・・・

走馬灯のように蘇ってくる過去の彼との記憶の思い出を引き裂くように
写真の彼とのツーショット真ん中から引き裂いた・・・

すぶ濡れながら情け容赦なく冷たい雨が降り続ける・・・

バシッバシッ音を立てて雨が跳ね返る・・・
ただ、さよならを身じろぎもせず、全身を雨に打たれながら聞いている。
通り過ぎる人々が二人をそっと盗み見る・・・

人目を気にせず、泣いてしまいたかった ・・・
あいつに泣かれた それで泣きそびれた ・・・
(ぶん殴ってしまえば?)とやきもき雨がそそのかす
(いつまでもあいつによく思われたい・・ 嘘つきね。)

(いつまでもあいつは何も言わない・・・・)
時間を忘れ いつまでも、二人は全身ずぶ濡れのまま・・・

---------だた、さよならを全身で聴いている----------