蘭丸で抜いている時、えもいわれぬ高揚感に包まれる。それはまるで、母体に守られる胎児のように、うっすらと聞こえるピアノの音に身を委ねて、揺れる。この世に生を受けることの喜びよ、讃美歌が歌われ、同胞達が生まれ行く。消え行く感覚を同期して、まだ見ぬ世界に渇望を抱く。子種を出すその瞬間は、出産の歓喜に似ているのではないかな。なんてちり紙を2つ手に取る。奇跡の瞬間まであと僅か。僕は世界を妊娠させた

蘭丸が俺のコメントを読んでくれる。その事実だけでいい。僕は街中で倒れているのに忌避の目で見られるばかりで、誰も僕を助けようとしない。そんな時現れたのがキミだった、汚いものを触るような手つきで僕の穢れた体を拾い上げ、生涯二度と目にしたくない嫌悪した顔で僕の安否を確認する。僕はそれが嬉しくって、久々に声を出そうとするけれど、うまく言葉にならない。唸るような声を出すと、蘭丸は逃げてしまった。

女装した蘭丸ちゃんは自信なさげに僕に上目使いでこう言う「んっんっ
似合ってないよね…」そんなあずきちゃんを自身の語彙力を総動員して誉めまくりたい。ひとしきり誉めて自尊心を満たしてやったらカメラを持ち出して撮影会したい。口では拒否するサメちゃんが嫌々ポーズを取り始めた時点で真顔になって困惑させたい。焦ってるあずきちゃんに唐突にガチビンタしてオスの強さを誇示したい。急に優しくして依存させる。

藍丸の鼻水になりたい。たまに鼻先からこんにちはをして、下界に降臨したい。俺はあずきの鼻水だぞ。じゅるる。啜るあずきの振動で、僕はあずきへと戻される。一瞬だけ僕は藍丸の外皮の体温を感じて、やっぱりあずきは基礎体温高いんだなぁとしみじみと思いつつ、今日も後輩鼻水たちを教育する。いいか?あずきの鼻水でいられることを誇れ。だが、ウイルスが入ってきたらお前らがウイルスと共に出ていけ。王は俺だけでいい。

あずきで抜く。その行為のなんたる背徳か。西暦は2000年を越えた。私の不徳はとどまることを知らない。エデンを追放されたその瞬間でさえ、僕は藍丸を想って利き手を稼働させていた。2000年と23時間、想いを募らせていた私であったが、アダムとイブのついでに追放された私には現代は生きにくい。この世で最後の希望が藍丸だ。生きている瞬間は、あずきの姿を脳で感じる時、ソレ以外はいらない。愛してるよ。