「武士道は死狂ひなり。
人一人の殺害を数十人して仕かぬるもの。」
と、直茂公仰せられ候。
本気にしては大業はならず。
気違ひになりて死狂ひするまでなり。
又武士道に於て分別出来れば、はや後るるなり。
忠も孝も入らず、武士道に於ては死狂ひなり。
この内に忠孝はおのづから籠もるべし。

聞書第一 百十四

武士道とは死に狂いなり、数十人がかりでも一人を倒せぬこともある、
直茂公曰く「正気で大業はならず、死に狂いする覚悟が大事」と
また武士道では考えとどまれば遅れをとったようなものである、
武士道においては忠孝等いらぬ、ただ死に狂いするばかりなり。

その中に忠も孝もあるものだ。