御令須は乱波の消えた方向を見た。馬の蹄の音だけを目で追いかけた。

>>426、8行目の後、>>427の前に挿入、 
 「やはりか」数歩後ろにいた漣児は足を止めた。何かの気配の音に見た。左の腕の革の留め金を腕の裏側に締め直し、手際良く木の固まりを取り付けた。
 「少し休ませてくれ」宜口は突然倒れ込むように地面に膝を付いた。背中が多少の苦悶を見せたいた。両手は自由が効く。
 しかし彼らの前では手枷を嵌めらているようなものである。
 「立てよ」御令須は辺りに目を送りながら言った。「知らせますか?」頭目らしき男は黙って頷いた。また別にも気配の数箇所の澱みがあった。
 数名の配下の者たちがそれぞれ間を開けずに立て続けに鍔を指で弾き、各々が鯉口を切り聞える僅かな波紋を送った。
 「なんだ?何をした?」而留弥は一人前に出た。歩く先へ視線を向けたまま聞いた。
 「もう少し先に茶店がある。出店が数件ある。なんだよ?この姿は?このいでたちでは皆余計に目立つじゃねえかよ」宜口が肩越しに言った。「うるさい。すぐに立ちあがらないとその右の耳を斬り落とすぞ」
 御令須は宜口の肩口に切先を置き、その突端の背中を宜口の横面を撫でるように這わせた。御令須は眉間に少しだけ皺を寄せ面倒な心持の冷めた目である。