>>434 →8行目・・片膝ついた  9行目→・・「回りたいんだろ?」

 「見ていないよ」「嘘をつけ!なんであそこにいたんだ?」「出稽古というかあんたらの知ったことではないだろ?」「知ったことだ。事務室にいただろ?」
「どこの?」「裏の・・」激しくやり合いながら言葉を交わす。傍から見れば、動作の大きな舞踊に見えるだろうか?
裏の?あの裏小屋か。セキリュティーを外して入り込み、探し見た物は何かの配置図だったからだ。
 
 突然だった。気配がどこにもなかった。畳一畳程のガラスの壁が両者の間に割って入って来た。
連弾となり疾風の刃が走り抜けたのである。「!?・・」レイノルズは見た。そして、男は刀を親指で鍔を弾くと同時に抜き放った。
「遠当て!?姉貴(未流貴)と同じか・・」レイノルズは呟いた。一打めは大筒であった。男は音もなく刀を鞘に納めた。次の組み打ちの仕掛けのために。
「当然かな・・」通称抜刀太元こと、モーリス・トゥーイが言った。「空筒だよ。ミスターヘイグ。そして、これが・・」

 それに続けて、太元は腰帯から鞘ごと引き抜き、柄を向かいへ水平に、そして左斜めに少し向けて両膝を曲げて半身の姿勢で構え、右手の中指を柄に添えた。
その時に複数のマーカスが再度スクラメージのフォーメーションで間合いを組むべく、にじり寄る動作を取っていた。「おっとと・・」
その動作の気配を察して、太元が透かさず刀を抜き放った。むろん抑止として。「お止めください」太元は言った。。

 疾風の刃は縦に二つに割れ、マーカスが作るフォーマーションに向かった。
その疾風の刃にダドリーが追いついた。ラグビーボールを片側の刃に殴り当てた。ダドリーは間合いを瞬時に殺す。
激しい飛沫と焦げた匂いが混ざりダドリーは咄嗟に手を引いた。「どうってことねぇ・・」ダドリーは言った。
太元は少し笑っている。張りつめた空気は薄れ、らしき殺気は弛緩した。腰帯に鞘を収め、そしてそのことに太元も気づき小さく溜息を付いた。