「体が熱い・・」体の中が沸き立ち血管が膨張する感覚が五体を満たす。体が溶ける。
体中の皮膚が爛れ落ち腕も抜け落ちた。足は持ち堪えずに腰から溶けて体から離れ落ちた。体が液体のように流れ崩れた。

 クローンは蝋のように溶けて形を失った。一つのネジが欠けた隙間を持ち建てられた塔がその隙間から折れ崩れるように・・。
人を超えた存在とならしめる発現要因のパーセンテージの操作は、ならしめる人の器としての存在に、人間本来が持つ不純の性質を懐疑させた。
自らを被造物とする自覚の習いをこれまでになく強く視覚させた。

 「薬品の過剰摂取の時に起こる反動や副作用を意図的に起こされる必要があります」研究室内をモニターする各画像を後ろに白衣の男が資料を持ち
説明する。「各人員の各発現能割合(パーセンテージ)の臨界値を満たし続ける先にまだ我々の着地していない所見があるかもしれません」
その部屋の隔壁への処置は、言わずもがなもとよりその研究施設然とした周波の類を捕獲し、平坦に偏域させる防諜処置が施されている。

 「我々の生体に埋め込まれた生命の機構は・・」「・・・」それぞれの隣席に注視を促した。「挑み訪れた先にある事態を牽制することに合致します」
「生態圏の区画を編成する現れは遥か過去から起こっております」説明する白衣の男はメガネのフレームを掴み鼻梁との隙間を正した。
「なるほど・・」傍らで聴取する者に小刻みに頷く仕草があった。「それに我々はすでに刻印には不慣れがない。予兆の扱いは冗にもなる」室内の気分が弛緩する。

 「あらましをあらかじめ・・」座席に埋もれて何かを考え込んでいた者が椅子の背凭れから身を起して呟いた。「あらましを初めから持つ者と持たぬ者か・・」
隣席する誰かを意識するともなく、末席を汚すようにもう一度一人呟いた。