「・・・」快晴の空の下、ジャック・マクルードは土煙を上げて着地した。アリゾナ州フェニックス。西海岸の内陸。やや西北にあるラスベガスの賑わいが作る街の帳が届かない平野部である。
「地の底に潜む獣。こちらからか・・」
 
 ー 軍の指示で漁港を性格とするその町に立ち入り制限線が敷かれた。
  立ち並ぶ店々から離れた疎らに店の並ぶ通りに続く通路には腰のホルスターに手を宛がう地元警察の人間が立ち会っていた。
  籠った轟音が水面を盛り上げた。港からの沖合で水柱が立ち上がり水を激しく打ちつけ飛沫を上げた。僅かに間を開け続けて埠頭近くで轟音を上げた ー
 
 「ッ!」もう一度、額の甲殻器から光の縫い針が連続で放たれた。光弾を放つしなる反動で首元に力が籠った。
ジャックが放ち撃ったオプティカル・バレーが防がれた。相手はジャックへ向けて振り向きざまに両腕を前に翳した。相手の間合い近くで光弾が歪められ着弾が真横に遁された。
「深き地に住まう輩(ともがら)だ・・」片隅にある街の暗闇で、眩く淡い光子を散らせその男は言った。

 ジャックは腰と袈裟掛けベルトのバックルを両手で掴み男に立ち向き合った。
ジャックのハイブリッド誘導体の体表面を幾筋かの光が四散し流れた。暗がりの中、光沢を魅せるように流れた。
 
 「・・・」その新手の誘導体は突っ伏した一体の模擬変異体を見た。「それを喰らうと眠るのにも安らかではないな」ジャックは一人を斃した。フレッド・マーカーは掌を見た。
「あと一体がいない」ジャックは辺りに注意を向けた。「頭株はもういない・・」そのくぐもった声が続けた。
身の丈でジャックのハイブリッド誘導体より一回りよりは大きい。それら表情が持つ声音は人工的ではない。二人の声色はいずれのそれも、今生の世界が備えるものではない。