私はスティーヴン・キングの愛読者ではないし、映画化されたものも数本しか観ていません。>>52
なぜか昔に購入していた『必携スティーヴン・キング讀本 恐怖の旅路』(1996年)に寄せられた
ホラー作家/映画監督クライヴ・バーカーの序文『恐怖の旅路で命を落とさないために』を一部引用。
https://www.amazon.co.jp/dp/4163627006/
《〜〜キングは死を売っている。血をすする者の物語、肉を食らう者の物語、魂の堕落の物語
――正気が、コミュニティが、信仰が、もろくも崩れ去ってゆく物語を、キングは書き続けている。
その作品では、闇に打ち勝つ愛の力さえ確かなものではない。隙あらば愛さえも呑みこんでやろうと
怪物たちは待ちかまえている。無垢も守りの力にはならない。大人と同じように子どもたちも
やすやすと墓場に入り、ごくたまに復活を遂げる子供がいたとしても、宗教が約束した栄光とは
程遠い形でこの世に蘇るだろう。〜〜おまえはどうして現実感覚の転覆をそんなに高く評価するのか、
と疑問に思う人もいるだろう。〜〜ぼくたちが住んでいる複雑な世界とは精神のことだ。結局、
人間が生きている場所は、自分の心の中にほかならない。人間の精神は、奇怪な大鍋のように、
知覚の情報・感覚の記憶・知的な思索・悪夢・夢をぐつぐつ煮こみつづけている。〜〜これまで
抑圧されてきた禁じられたものへの嗜好が解き放たれ、子どものころから聞かされていた話とは違って、
奇怪なもの、おぞましいもの、逆説的なものを好むことが、実は健康の証(あか)しであることを
悟るのだ。だからぼくは、こういいたい。転覆せよ、と。けっして弁解するな。》