川本三郎氏の「ビデオとの遭遇」の続き。『映画をめぐる冒険』(1985年)の【あとがき】。>>400 >>478
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《〜〜ビデオ・マニアの“異常な愛情”を描いた『ヴィデオドローム』の監督デヴィッド・
クローネンバーグは六月の東京国際映画祭で来日したとき、こんなことをいっていた。
「『ヴィデオドローム』は北アメリカでは、劇場での上映よりもビデオ・カセットや
有線放送で成功した作品です。その理由は、内容が非常に複雑であったために、何回か
繰返して見た方が理解が深まるからです。この意味では不思議とビデオは映画を見る
よりも、本を読むことに似ています。見る側で、内容をより良く理解するためのコント
ロールができるからです」 なるほど「映画を見る」のに対し「ビデオを読む」という
関係があるのかもしれない。ビデオ向きの映画とそうでないものがあることも確かだ。
シドニー・ルメットの『十二人の怒れる男』はビデオで見ても面白いが、ペキンパーの
『ワイルドバンチ』はビデオでは無理だ。『禁断の惑星』はビデオでも面白いが、タル
コフスキーの『惑星ソラリス』は絶対に映画館で見たい。〜〜ただ「映画評論家」としては
ビデオ時代は受難の時代でもある。こうビデオが普及してしまってどんな映画でも誰でも
見られるようになってしまっては、もうプロとアマの差などなくなってしまうからだ。
いやホラーやスプラッターのジャンルでは、なまじの「映画評論家」よりもマニアックな
若いファンのほうがよほどくわしい。〜〜》 『映画をめぐる冒険 2』を是非読みたい。