『映画秘宝』2019年3月号 町山智浩vs柳下毅一郎

柳下 2018年の秘宝ベストは『カメラを止めるな!』が本誌・読者ともに1位!
町山 傑作だったね。リアルだった。映画作りって実際は最初に作りたかった
ことの10分の1も実現しないっていう現実を描いていた。「○○はNGです」とかを
えんえん繰り返しながら、映画がどんどん小さくなって別のものになっていくんだ。
柳下 それは自分の経験を鑑みて?
町山 そうそう。最大の障害は予算だよね。『進撃の巨人』(15年)で樋口真嗣監督
と盛り上がったのは、人間が次々に巨人化して世界を支配する過程を見せようってこと
だったの。でも、それは100分の1くらいの規模になっちゃった。あと、俳優のNGね。
巨人になった主人公が人間に戻った時は全裸っていうのをやりたかったの。(中略)
でも、それは俳優の方からNG出てさ。どんどん映画のエッジが削られていくわけ。
柳下 そのせいで、なぜかやりたくもなかったことだけが残ると。