>>329
ちょっと掘り下げて論評を加えてみるとさ

太宰治の「トカトントン」という終戦後すぐに発表された短編小説があって
要約すると、戦争が終わって街中で「トカトントン(たぶん、工事現場の音)」が聞こえるようになり
それは戦後復興の兆しであり、人々が戦時体制から日常に戻って行く象徴として描かれていて

一般市民にとっては「明日への希望の象徴」なんだが、太宰にとっては逆だったらしく
軍部の洗脳下からGHQの洗脳下へとコロッと180度転向してしまい、何事もなかったかのような日常に虚しさを感じる
そんな内容(三島由紀夫も同じ事を感じていたから、後に自決した)

戦争という非日常空間でインスピレーションを得ていた太宰にとっては、戦後の「平凡な日常」こそが恐ろしく
絶望の火種になってしまった、自殺という末路を容易に想像させる作品なのだが

「東京物語」は、その太宰の「男性ならではのロマンティシズム、理想主義」を、女性は一切持っておらずw徹底してドライで
何事もなかったかのように、太宰の恐れた「平凡な日常」に戻れてしまう
その男女間の決定的な断裂を描いているようにも思うし

原節子の「ズルい」という発言は、小津監督自身の、ドライな女性の精神性に対するやっかみなんだよ
(彼自身は、太宰的な心情を理解できるから)

つまり、あれは、小津監督自身の言葉なのよw
だから「メタ視点」というのは、そういう意味で当たってるんだな