今年の東京目白椿山荘で行われた、城さんのディナーショー前のディナータイムでのこと。
私はひとり、白いテーブルクロスと花で彩られた円形テーブルに早めに着席していた。
1テーブル10席の内、半分はやがて客で埋まったが、残りの5席がなかなか埋まらない。
開演20分前程になって、4人の中年とみられる男女の客が急いで着席し、ディナーも大急ぎで運ばれてくる。
でも私の隣の1席は、空席のままだ。
その空席のまた隣に座っている50歳過ぎとみられる少しふくよかな女性が、空席に向かっておもむろに話しかけはじめた。
「お母さん、もうすぐ始まるよ…、楽しみだね…」、その後も色々な事を何度も空席に向かって話しかけていた。
「…そうか、この人たちは兄弟姉妹で、お母さんのために城さんのショーを予約していたんだ、でももう亡くなってしまって間に合わなかったのか…」
話の内容を聞いて、そう察した瞬間、大粒の涙が流れそうなのを私は下唇を噛み締めて耐えた。
この人たちのお母さんなら80歳くらいか、こんなにも幅の広いファンがいて城さんは幸せだと思った。
もう日本はすでに高齢化社会で、城さんのコンサートに年配者が多いように見えるのは、そのまま日本の年齢層分布の縮図を表しているのではないか。
幅広い年齢層に支持されていることを誇りに思って良いし、そのことが城南海としての音楽の取り組み方や方向性が間違っていないことを証明しているようにさえ思える。