Bugcity
青山陽一
 2001年6月

自分が長いこと追いかけてきたミュージシャンが時代の空気を掴む瞬間というのはなかなか目撃できないもので、
青山陽一がどんどん「その人」になっていく様は僕にはとてもまぶしく映る。
特に97年のアルバム「Ah」以降の彼は日本のロックの奇跡で、とにかく買って聴けと申し上げたい。
 といいつつ実は、非常にキャッチーなロックアルバムだった「SO FAR, SO CLOSE」以来、
彼がまたもや新しい領域に足を踏み出していることは薄々わかっていて、どっちに向かうのかちょっと不安であった。
結果はオオライである。ブリットポップに始まりブルースから音響派へ、どんどん守備範囲を広げていって全て青山印にしてしまう咀嚼力の持ち主。
そろそろ満点をつけたい気分だがいつまでたっても彼のピークが見えないので、まだまだ控え目に紹介する。

今回のアルバム、1曲目はいきなりスティールドラムのインストである。
以降お得意の文科系ポップからサンプリングもの、ジム・オルーク的な奏法も散見するが、どんな素材もあの鼻声と凝りに凝ったコード進行で青山ロックにしてしまう。
とにかく聴き込むほどに耳にこびりつくメロディ、井上陽水のように行間のイメージをさそう言葉のセンス。キリンジなど聴いてる場合ではないのである。