アナザーストーリー
650円の金額に驚き、大きな声を出してしまう。工業用のウエスにでもしてもらえればと持ち込んだ服だったからだ。

今日は大量の服が処分できた。明日からの新居の引っ越しが楽しみだ。
そんなことを考えながら信号が青色になるのを待っていた。

バックミラーにサングラスをかけた黒づくめの女性が近づいてくるのが見えた。自転車に乗りスカートをなびかせている。

さっきのリサイクルショップの女性だ。
お金を手にした彼女のうれしそうな口元を思い出した。
今の生活にどうしても必要なお金だったのだろう。

信号が青色に変わった。
車を走らせる。
私と彼女との距離が広がっていく。
私は彼女の幸せを祈った。

車を加速させる。
バックミラーに映る彼女がさらに小さくなっていく。