「お父さん見て!シャナだ!かっけー!」
息子に読ませている政治・経済雑誌の特集ページ、世界を動かす100人のリーダー。
今週はホルデイン、つまり敵国、将軍シャナの記事だった。
今、息子が憧れている男である。
武家の子としては、武を尊ぶ姿勢は好ましいものではあったから、
息子でも読めるようにと、ゴシップ(うわさ)誌ではないにせよ読み易い本を選び与えてみた。一方に片寄らないリベラル(中立的)な視点による、分かりやすい理知的な分析を評価されている雑誌でもある。
ゆくゆくは世界でもっとも社会的地位の高い者に影響を与えてきた『theエコノミスト』などの週刊誌も読ませては、批判や議論などさせてみるつもりだ。
もっとも、愛する我が子には根っこの所に生きる為の意思・強さがあり、社会を肯定し協力して成長していけるだけの令と和が垣間見える子になってくれるなら、その理解度や洞察の鋭さなど、どうでもよかったのだが。
「しかし、すごい時代になったよなあ」
政治・経済紙といえど、シャナは敵国の将である。本誌ではシャナの活躍、リーダーシップ、強み、運営組織力、ネコミミ学園の様子などがやや魅力的に盛られてはいるが、実際の記録や関連する法や制度や調査を基にして記者の私見や洞察が進む中、ヘイト(敵対的)表現などは一切見られない。
昔ならば、敵性国家の将などは国民が一丸となって罵詈雑言を飛ばす対象でしかなかった。
今、国民は自由民主主義の下、リベラルな側に立つような視点・知性を持って、利と向き合うことを尊ばれている。
「そういう時代なんだな」
嬉しそうにシャナの記事を読み進める息子に微笑みかけ、
私はリクライニングチェアに座り、いつの間にか目を閉じていた。

夢を見た。
集団による限られた食や資源を奪い合う生存競争を経て、
世界的秩序を統合するための格付けとしての世界大戦を経て、
チームスポーツ競技による文化的洗練で向上し合う、
そういう世界の果てで、息子とシャナが、共に戦っていた。

続く