武本さん 2019-08-21 18:58:02

(略)

僕の退任が決まり、武本さんが後任の監督に決まった時、
「ヤマモッチャン、ちょっと店行こうや」
監督やれ!と言われたのと同じ店だった。

彼は慰めてくれるのかと思いきや、いきなりノートを開いて、
「『らき☆すた』で考えた君のコンセプトやプラン、アイディアは俺が全部受け継ぐから、全部言ってくれ」

飲み屋で僕が延々と作品に込めた内容を語り、武本さんはそれを必死にメモした。

非常にいい人だったのだ。
厳しい人だったけど、義理に篤い人だった。
その時「お前の『らき☆すた』を俺は受け継ぐ」と言ってくれた男気。
本当感謝しかない。

・・・と、美談で締めたいところだが、後になって各話スタッフからじゃんじゃん電話がかかってきて、
「山本さん!コンテ描いたんで見てください!」
へ?
「武本さん、コンテまったくチェックせずぶっ通しなんです!」
あらー。

誰とは言わないが、初コンテのスタッフ二人までそんな状態だったから、話数も明かさないでおくが、何話かは僕がこっそりチェックした。
ひとりは家まで来てもらったかな。
もうひとりは家が遠いものだから、スタジオからほどほどの距離の駅の前で、チェックした。
確か店に入ったけど閉店で追い出されて、噴水的なものの前のベンチで残りをしたんじゃないかな?

僕も立場上、余りあれこれ直すつもりはなかった。
むしろ、演出技法を教える感じで、最低限のことを言っただけ。

こうして『らき☆すた』は、みんなの力で護られた。
今だから言えるが、立派な作品になったと思う。

そこでかの名高き「新章」だが、あの疫病g・・・いや「大天才」は何一つ、僕に訊くことはなかった。
伝え聞きだが、「ボクが『WUG』のことを一番解ってるんだよ!」と言ってたんだとか。

その結果が、あれだ。
作品の出来は、やはり作る姿勢から違うものだ。

(略)