藝大先生の上の大先生がこんなこと言ってるんだからピティナ一生懸命やってもね

今年新たに導入されたプレ特級。
95名の参加者の中から10名が決勝に進出し競い合ったが、審査員の評価がばらつき、1位から最下位までの点差が平均点で1.66、上下カットでも僅か2点差という結果が出た。
しかも、仮に平均点評価で決定すれば、1位と2位、8位と9位の順位が入れ替わる。
このように点差が開かないと、評価方法が現状の上下カットのみで良いのか、また僅か0.14の差で金銀の差をつけて良いのか、コンクールにおける採点法、いや、コンクールそのものの存在にさえ疑問を抱く。

「ピティナ」と言えば「コンペティション」と同義語に言われるようになった今日、
ピティナ・ピアノコンペティションは実はピティナ=全日本ピアノ指導者協会が日本のピアノ教育向上のための試みの一例として始めたものであったことを説いても、
コンクール至上主義に走る指導者や親子たちには言葉が届かないように感じる。
全日本ピアノ指導者協会の創立の理念も目的も巨大化したコンクールの陰に隠れてしまった。
今回のプレ特級の審査結果は、そもそもコンクールが危ういものであることを物語っている。
審査法が変われば順位は異なる。これを時の運とだけ片付けて良いのだろうか?コンクールを追いかけて心身ともに疲弊した子供たちと出会うたびに胸が痛む。

本来、音楽の学習は身体と脳の成長に合わせて時間をかけて培われなければならないものだ。
特に子供においては、目先の結果は将来の実りを保証するものではないことを、指導者も親もよく心得ておかなければならない。
本質的な学びを与えるためにはどうしたら良いか、何をすべきか根本的な議論が必要な時期が来ている、と私は思う。

近年のピティナの体質に疑問を感じることが多くなった昨今、熟考の末、私は今年度の審査をもってピティナを辞することにしました。
若い世代がエネルギーを結集させて全日本ピアノ指導者協会のより良き未来を構築して行くことを、ピティナ創立時からの最古参の理事の一人として切に願うものです。

  (Pre特級審査員長:播本枝未子)