【ソウル=名村隆寛】先月の就任以降、慰安婦問題をめぐる日韓合意の「再交渉」への言及を控えていた韓国の文在寅大統領が、日本の法的責任や公式謝罪を言い始めた。さらには、日本の「努力不足」までも主張。追加措置を求める本音が出てきたかたちだ。

 文氏は大統領選への出馬前の昨年から、日韓合意の白紙化や再交渉を公言していた。選挙前夜の5月8日には、最後の街頭演説で「日本には『慰安婦合意は間違いだった』と堂々と説得する」と叫んだ。

 ところが大統領に就任するや「再交渉」の言葉は鳴りを潜めた。その代わり、文氏は安倍晋三首相との電話会談で、「国民の大多数が(合意を)心情的に受け入れられないのが現実だ」と伝えた。今月訪韓した自民党の二階俊博幹事長にも同じ言葉を繰り返した。

 大統領府がいったん発表した人事の発表での「韓日合意再交渉」という表現を直後に取り消したこともあり、韓国政府の公式的見解は「国民の大多数と被害者(元慰安婦)らが受け入れられない」(韓国外務省報道官)で一致している。

 しかし文氏は最近、「問題解決の核心は、日本が法的責任を取り公式に謝罪することだ」と米紙ワシントン・ポストとのインタビューで語ったのに続き、ロイター通信には「慰安婦問題を含め、韓国との過去の歴史問題を解決するために(日本は)最善の努力をしていない」と批判した。

 日本政府は慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意に従い、安倍晋三首相が「おわびと反省の気持ち」を表明。元慰安婦への支援金として10億円を拠出するなど、合意を履行し最善の努力をしている。

 「再交渉」という表現はなくとも、最近の文氏の発言は大統領就任前に戻ったかたちで、欧米メディアを相手にし、抑えてきた本音が出たものと解釈できる。

http://www.sankei.com/world/news/170623/wor1706230044-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170623/wor1706230044-n2.html

http://www.sankei.com/images/news/170623/wor1706230044-p1.jpg
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領=23日、泰安(AP)