【若年層の失業率は過去最悪に】

「恋愛」「結婚」「出産」「人間関係」「マイホーム」「夢」「就職」の7つを放棄した「七放世代」──今の韓国の若者は、このように表現されている。就職をめぐる韓国のゆがんだ現状について、在韓ジャーナリストの藤原修平氏が苦しむ若者たちの話を聞いた。

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2015年には、韓国の就職率は国内トップのソウル大学でさえ約70%で、四大卒の平均が約64%、短大卒で約68%だった。50%台だった2010〜2014年よりは回復したが、まだまだ低い。

就職難の原因の一つが、競争率100倍を超える財閥系企業に就職しようと多くの人が殺到することだ。大手10大財閥に勤務する人は勤労者全体の6%に過ぎず、しかもそれらは外国人の雇用比率が高いため、韓国人が実際に就職することは、数字以上に難しい。

それでも韓国では若者が財閥への就職を目指し、親はそれを応援する。高校生の子供を持つ母親のパク・スンヒさん(仮名)はこう言う。

「韓国では中小企業が不安定です。それに何といっても、年収が低すぎます。だから韓国の親は、子供が大企業に入れる可能性が少しでも広がるように、一生懸命支えるのです」

非正規社員も多く、統計庁によると、全勤労者に対する非正規社員の比率は2003年から常に30〜40%の間で推移している。

2016年施行の「青年雇用絶壁解消総合対策」で就職した青年層のうち、非正規の割合は42.4%。月給15万円に満たない人も4割以上いる。政府の必死の対策は、安月給の非正規の若者を量産しているだけだ。

2010年から続く就職“超”氷河期と、妥協して中小企業に就職した場合に予想される低賃金への恐怖で、未来を描けない若者が続出している。生き地獄を意味する「ヘル朝鮮」という言葉が2年ほど前から使われるようになったが、七放世代はそこで虐げられる若者の実情を現す言葉なのだ。

韓国教育部も対策に躍起だ。卒業から1年以内の学生を就職させるよう大学側を指導するが、実際は“締め付け”である。就職率の低い状態が続く学科は、政府の大学運営指針に則り、廃止に追い込まれる。

そうした圧力は学生自身にも及ぶ。本人の希望は無視され、大学の就職実績を高めるための指導が行われるのだ。喫茶店で話を聞いた、ソウル近郊に住む25歳の女性はため息まじりにこうこぼした。

「私はもともと短大から4年制への編入を希望していたのですが、入学してすぐに先生から、卒業したら編入は難しいから就職しなさいと言われました。実際に卒業した後も連絡をくれたので、結局、指導教授の紹介先に就職しました。が、残業が多すぎて体を壊してしまい長続きしませんでした。今でも仕事を探していますが、卒業して1年以上経つと、先生からは何の音沙汰もなくなりました」

大学教員も、自らの評価と関係のない、卒業から1年以上過ぎた学生にはまったく関心を持たないのが実情だ。

文在寅大統領は公共部門で雇用対策を打ち出すも、民間での雇用拡大には具体策が見られない。若者が夢を託した公約が、青写真のままで終わってしまう懸念が消えない。

※SAPIO2017年7月号

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