朝鮮日報/楊相勲(ヤン・サンフン)主筆
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/06/29/2017062901100.html

記憶をたどってみると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が脱原発に初めて本格的に言及したのは2012年のことだった。当時は大統領選挙を前で、福島原発事故発生後の日本を訪れた時だ。

数日間はニュースになったが、それだけでその話題は出なくなり、文大統領は同年の大統領選挙で落選、脱原発の話もなくなった。それから文大統領が再び脱原発について語るのを聞いたのは昨年冬、韓国映画『パンドラ』の試写会場だった。

この映画は、地震で原発が爆発して深刻な被害が出たのに、政府は無能だったというストーリーだ。文大統領はこの映画を見て、「たくさん泣いた」と言った。しかし、原子力専門家らはこの映画を「とんでもない内容だ」と酷評した。

映画は観客動員のため極端な状況を設定し、大きく誇張することが多い。それにもかかわらず泣くとは、フィクションを事実のように感じて受け止めてしまっているようだ。

一般人ならよくあることだろうが、大統領がこの映画を見て感じた心情のままに国家政策を左右しようというなら尋常なことではない。

事実、文大統領は就任して1カ月余りで脱原発政策を発表した。この脱原発政策は、政策そのものが与える衝撃よりも、そのプロセスの方が衝撃的だ。

文大統領自身の原子力知識が『パンドラ』以上とは言いがたいだろう。文在寅陣営の環境・エネルギーチームにも原子力専門家とされる人はいない。

責任者は李明博(イ・ミョンバク)政権の「4大河川整備事業」に反対した河川環境専門家だった。エネルギー関連公約では、環境活動家1人と微生物学専攻の医学部教授が関与していたという。

このとんでもない政策を発表しておきながら、どんな人々がどのような根拠で決定したのかについては、まだ明確な説明がない。

このため、環境に対して偏見を持つ何人かが集まって「なにか一発やってやろう」という調子で決定したのが「脱原発」なのではないかという懸念が頭の中から消えない。

文大統領の脱原発は福島第一原発事故で頭に浮かび、昨年の慶州地震でしっかりと固まった。ところが、これは完全に間違った認識であることが最近になって明らかになった。

ソウル大学のチュ・ハンギュ教授が新聞への寄稿で一つ一つ指摘している。文大統領は脱原発宣言式で慶州地震を例にあげ、「韓国は地震安全地帯ではない」と言った。

そして、「地震による原発事故はあまりにも致命的だ」として、福島を例に挙げた。福島原発事故は地震ではなく、地震後の津波で発電機が浸水したために起こった事故だ。

津波のない一般的な地震だったら福島の事故はなかった。つまり、慶州地震問題と関連付けることはできないのだ。

英国の原子力専門メディアは「韓国政府は福島原発事故の原因が地震ではなく津波であることを知らないようだ」と報じた。世界的に見ても地震だけで発生した原発事故は1件もない。

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