中国国内で汚職に関わり、米国に逃亡したことにより国際指名手配を受けている中国人大富豪に関し、新たなる重大疑惑が明らかになった。

この大富豪は2013年、当時英国首相だったトニー・ブレア氏を介して、UAEのアブダビで、モハメド・ビン・ザイード・アル・ナーヤン皇太子ら王族と会って、巧みに商談を持ち掛け、30億ドル(約3330億円)もの巨額な資金を自身が経営する証券会社に投資させていたという。

結局、資金は返ってこず、この大富豪の懐に収まるという典型的な詐欺事件に発展したが、皇太子ら王族や、王族を紹介したブレア氏もあまりにも簡単に騙されたため、体面を気にして表ざたになっていなかったという。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。

この大富豪は上海を拠点とする海通証券の郭文貴・元会長。郭氏は曽慶紅・元国家副主席の側近で、海外のスパイ工作の責任者だった馬建・元国家安全部副部長と連携して、海外でのスパイ工作網作りを担っていたとされる。

曾氏とのつながりを誇示しながら、海通証券の会長との肩書を使い海外の要人と密接な関係を構築。その一人がブレア氏だった。

ブレア氏も一時、「郭文貴氏は10年来の友人」と語っており、郭氏のプライベートジェットに乗って、ともにアブダビに乗り込み、皇太子ら王族を紹介したほか、スイスの大手銀行UBSと郭氏との仲介を行ったという。UBSは郭氏に5億5000万ドル(約610億円)を融資したが、返ってこなかった。

郭氏は中国内のビジネスでも曾氏との関係を利用しており、馬氏にも賄賂を贈るなどして、利権を拡大していった。しかし、習近平指導部による反腐敗運動で、馬氏が逮捕されたことから、身の危険を感じて、2015年には香港から米国に渡って、姿を消した。

その際、多額の現金とともに、馬氏から得た中国共産党・政府高官のプライベートな情報や党政府機関の機密書類も多数持っていったことから、中国当局は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際指名手配をかけている。

その後、この5月には米国政府系報道機関「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」に出演して、「習近平国家主席は『自分は王岐山・中央規律検査委員会書記や、孟建柱・中央政法委員会書記を利用はしているが信用していない』と傅政華公安部副部長に語り、王や孟の親族が関わっている腐敗問題の調査を開始させた」などと語った。

これが事実かどうかは、定かではないが、王氏や孟氏は習氏の側近であり、とくに王氏は習氏が腹心とも頼む間柄だけに、香港メディアは「郭文貴の逆襲が始まった」などと伝えている。

今後、郭氏によって、政権内部のスキャンダルが流されれば、今年の秋に第19回党大会が開催されることもあって、習氏への打撃ともなりかねず、習指導部は郭氏の消息を懸命に追っているという。

https://www.news-postseven.com/archives/20170702_575537.html
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