この往生際の悪さは何なのだろう? 5月31日に埼玉スタジアムで行われたアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の決勝トーナメント1回戦第2戦で、済州(韓国)の選手やスタッフが浦和の阿部勇樹や槙野智章らに襲いかかった事件のことだ。

 既にアジア・サッカー連盟(AFC)が審判を突き飛ばした趙容亨(チョ・ヨンヒョン)に6カ月の出場停止▽阿部にジャンピングエルボーを見舞った白棟圭(ペク・ドンギュ)に3カ月−などの処分を科しているが、それを不服として、再審議を要請するという。韓国紙の中央日報日本語版(電子版)が報じた。

「十分に納得できかねる」と不満募らせて

 同紙によると、済州の競技力向上室長が6月26日、「懲戒の内容に関連し、AFCに説明資料を要請して受け取ったものを検討した結果、十分に納得できかねると判断し、AFCに再審議を要請する考えだ」と明らかにした。

 また、再審の結果次第では、国際スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴する方向で検討する予定だという。 

 AFCは6月9日、試合中に退場となりながら乱闘に加勢した趙容亨に6カ月の出場停止と罰金、阿部に肘打ちした白棟圭は3カ月と罰金、浦和選手を殴った権韓真(クォン・ハンジン)には2試合と罰金−の処分をそれぞれ科し、クラブにも4万ドル(約440万円)の罰金を命じた。

 一方で、“被害者”である浦和にも2万ドル(約220万円)の罰金を科している。

反省よりも先に、処分重すぎる

 AFCに再審議を要請するなら、意味不明な処分を受けた浦和側だと思うが、前代未聞の暴力事件を引き起こした“加害者”であるはずの済州は、反省するよりも先に、処分を重すぎると感じたようだ。

 さらに不思議なのが、中央日報の「連敗に陥った済州…『かんばしくないことで選手が心理的・肉体的に疲労』」と題した記事に書かれている内容だ。AFCから選手3人が重い懲戒処分を受けた済州は、国内リーグ戦など6月の3試合で、立て続けに黒星を喫した。

 その理由について、趙星桓(チョ・ソンファン)監督が「かんばしくない事態などで選手たちが心理的・肉体的にかなりの疲労を感じている」と明らかにしたというのだ。

 その上で、趙星桓監督は「何よりも重要なのが心理的・肉体的に疲労している選手たちの回復」「できるだけ雰囲気を明るく持っていって良い結果につなげたいと考えている」−などと話したという。

 AFCの不当に重たい処分によって精神的、肉体的な苦痛を味わったわれわれは、被害者である−との訴えなのだろうか。そして、被害者には当然、再審議を要請する権利がある…。

 いつの間にか、重大な暴力事件を引き起こした当事者であるとの意識はどこかに棚上げされ、韓国内で忘れ去られている感じがする。

 その背景のひとつが、国際的な取り決めを粛々と受け入れられない往生際の悪さにあるような気がする。

 以前に「(AFCの)うやむやな裁定が済州の暴挙を招いたのでは?」と書いた。しかし、韓国サッカー界の暴力傾向がなかなか改まらない背景には、もっと別の理由も存在している気がする。

http://www.sankei.com/west/news/170706/wst1707060006-n1.html
http://www.sankei.com/west/news/170706/wst1707060006-n2.html
http://www.sankei.com/west/news/170706/wst1707060006-n3.html

http://www.sankei.com/images/news/170706/wst1707060006-p1.jpg
小競り合いとなる両イレブン=埼玉スタジアム (撮影・山田俊介)
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試合終了後、浦和・槙野(右端)らを追い回す済州の選手=埼玉スタジアム