閉会中に国会で審議を行うというなら、何よりもまず、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮の深刻な問題こそ取り上げるべきではないか。

 衆参両院は10日に閉会中審査を開き、学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を取り上げる。だが、北朝鮮の核・ミサイルを論じようという声は与野党いずれからも聞こえてこない。

 物事の軽重が分かっているのだろうか。

 国会には衆院外務、安全保障の両委員会や参院の外交防衛委員会があり、さらに拉致問題特別委員会が両院に置かれている。

 安全保障関連法の制定当時、閣僚や与党議員は「国民の命と平和な暮らしを守り抜くためだ」(安倍晋三首相)と説明した。

 今こそ国際情勢や安保関連法を踏まえ、日本を守る防衛、外交政策を論じるときである。それは与党が主導すべきだろう。

 野党はことあるごとに、文民統制(シビリアンコントロール)の重要性を強調する。文民統制の当事者として、国の守りを積極的に論じるのは当然の責務である。

 その際、国会は外務省や国家安全保障局(NSS)に説明を求めるにとどまらず、北朝鮮の脅威と日々対峙(たいじ)している自衛隊から専門的な説明や見解を聞くべきだ。

 制服組トップの河野(かわの)克俊統合幕僚長らを招き、迫る脅威の実情や考え得る対応策について、基本的な説明を受けることも有意義なことだろう。

 米国など日本以外の主要国の議会では、軍幹部から頻繁に説明を受けている。自衛隊制服組の国会出席を妨げる法令もない。昭和30年代に、航空幕僚長などとして源田実空将(当時)が答弁した例もある。

 制服組に発言させないことがシビリアンコントロールだ、とでもいう考えがあるなら、いかにも非生産的である。

 「加計」問題は東京都議選での自民党大敗に結びついた一因と考えられている。この問題について、有権者の疑問に答えようとすること自体はおかしくない。

 だとしても、閉会中に国会議員を集めながら、北朝鮮の脅威から国民をどう守るかという課題は素通りするつもりなのか。

 国会の存在意義が問われよう。疑問を差し挟まれる状況を、自ら招く愚は避けてほしい。

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北朝鮮の労働新聞が5月22日掲載した、中距離弾道ミサイル「北極星2」の実戦配備に向けた「最終発射実験」の写真(共同)
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北朝鮮がICBMとするミサイル発射を報じる街頭テレビ=4日夕、東京・新宿
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4日、「火星14」の試射を視察する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(右から2人目)。朝鮮中央通信が配信した(朝鮮通信=共同)