米国の独立記念日にあたる7月4日、北朝鮮は米国本土の一部(アラスカ州)も射程におさめるとされる大陸間弾道ミサイルの発射実験に成功した。実用化にはまだ時間がかかるだろうが、核戦力のレベルを大きく引き上げる実験の成功でこの独裁国家は、核兵器を放棄せず「核大国」への道を歩み続ける意志をあらためて世界に示した。

 当日、モスクワを訪問していた中国の習近平国家主席はロシアのプーチン大統領と会談し、問題の平和的解決に協力していくことで合意している。それはいいが、2人が提案したのは、米韓軍事演習の停止と引き換えに北朝鮮が核開発を凍結する、というものだった。

 無責任な提案だと思う。軍事演習がなければ、米韓同盟は機能しなくなるが、その代償に米韓両国は、北朝鮮の核「凍結」(「廃棄」ではない)を得るというのである。凍結をどう保証するかも定かでなく、米韓が受け入れられないのは明らかだろう。このタイミングでのこういう提案は、北朝鮮を応援するに等しいのではないか。

むろん中露両国も、北朝鮮の核大国化を望んでいるわけではなかろう。実際、今回のミサイル発射には反対を表明した。だが両国は、核大国化を阻止する責任は米国にあり、自分たちは火中のクリを拾いたくない、との態度をあからさまにしている。両国と北朝鮮との歴史的関係、両国の国際社会における地位、どちらから考えても納得しがたいところがある。

 米国のトランプ大統領は、フロリダでの習主席との会談(4月)以来、中国が問題解決に尽力することを期待していたようだ。だが中露首脳会談の翌日、「中国との協力は終わり」「試してみる必要があった」とツイッターに書き込んだ。

 大統領はすでに、中国が解決できないなら自分たちで解決すると明言している。米国自身の安全保障、「再び米国を偉大にする」という選挙公約、さらには前任者たちとの違いを国民に示す政治的必要などからいっても、今後は北朝鮮への政治、軍事、経済的圧力を格段に強めていくと思われる。

 日本もさらに真剣に、この問題に取り組まねばならないだろう。北朝鮮の核保有はわが国の安全保障上の重大な脅威だが、同国が米国と張り合うような核大国になれば、その脅威は何倍にも膨らむ。

また、このまま北朝鮮の核大国化を許せば、世界の核不拡散体制はますます揺らぐだろう。その結果もし万一、広島・長崎の悲劇以後続いている、核不使用の歴史が破られるようなことになれば、人類の未来は一挙に暗いものになる。

 わが国は、この問題がわが国と地域の安全を脅かすだけでなく、世界全体の安全保障に重大な影響を与える問題であることを強調して、その解決に世界各国の協力を求めなければならない。そのためにも、米国と協力しつつ北朝鮮への圧力を強め、国際社会の責任ある大国として問題に全力で取り組む姿勢を世界に示す必要がある。 (さかもと かずや)



http://www.sankei.com/world/news/170724/wor1707240012-n1.html
2017.7.24 11:30