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 政府の組織改編などが、野党の反対によって進展していないことを問題視したのだ。

 政権発足2カ月が過ぎたこの時点で、国防相や文氏が最重要課題とする雇用問題を担当する雇用労働相ら主要閣僚が決まっていなかった。いずれも、野党の反対によるものだ。国防相にはこの2日後、文氏が任命を強行するかたちで宋永武(ソン・ヨンム)氏が就任した。

 難航の末、月末に入って、主要閣僚の任命がほぼ終わり、省庁再編法案や補正予算案の修正案がようやく可決された。ただし、予算規模や雇用創出に向けた公務員数の拡大は、野党の反対によって当初の案から大幅に抑えられた。

 これに似たような光景は以前、前政権下でも見た記憶がある。朴政権当時、文氏が所属する当時の最大野党(現在の「共に民主党」)が先頭になって没頭した“政権運営の妨害”だ。野党時代に保守政権の現実路線に反発した末に、大統領の座に就いた文氏が、皮肉にも同じような妨害を受けているのだ。

 「そりゃ、そうでしょう」と言うしかない。政権発足後の内政での第一ハードルをどうにか越えた文氏ではあるが、国内の現実を前に朴氏同様、野党に協力を懇願しなければならない状況に追い込まれている。よその国の内政問題であり、文氏にも朴氏にも同情などしたくないが、これも政権が変わった際に見受けられる韓国らしい現象だ。

 文氏は結局、朴氏がかつて野党に協力を求めたのと同じことをやらねばならない。朴氏にさせなかった国難克服を、今度は自分が実現せねばならない。

近づくハネムーン期の終わり

 政権発足からまる2カ月半となった文在寅政権は、政権発足の準備期間もないままスタートした。ある程度の迷走はやむを得ないのかもしれない。こうした中で近づいているのが、新政権発足から100日間のことを指す「ハネムーン期」の終わりだ。

 米国などでは、この100日間には野党も新政権への批判や評価を避け、発足直後、新政権への支持率は高くなる傾向がある。韓国でも同じようだ。

 文在寅政権の支持率は5月の発足後、最高で80台%後半、最近は74%(韓国ギャラップの7月18〜20日の世論調査)。下落傾向にはあるものの、それでも70%台なかばの支持を得ている。

 ただ、これには、不正腐敗がなくならず、経済が低迷する韓国を「国らしい国にする!」と豪語した文氏への期待感が相当に込められていることがうかがえる。「文在寅なら大統領選で掲げたバラ色の政策で、どうにかしてくれるだろう」という支持者らが、文氏に託す大きな期待だ。

 確かに文氏は就任後、「国民第一」をモットーに、朴政権とは違って国民の声に耳を傾ける姿をアピールしている。

 世論調査(韓国ギャラップ)で、文氏の職務遂行を「評価する」と答えた理由うち、最も多かったのが「国民との疎通、共感への努力」で13%だった。ありがちな“臭い芝居”に映るものもあるのだが、韓国国民は現在も、期待を抱きつつ文政権を見守っている。

期待を裏切れば

 文氏は19日には大統領府で「国政運営5カ年計画」を仰々しく発表した。発表は結構。問題は文氏の計画が今後、国民との約束通り実現し、国民を満足させることができるかだ。

 文氏の支持者は、「ぜひ暮らしをよくしてほしい」と文氏の手腕に期待して大統領選挙で投票したはずだ。彼らの主流は、朴政権に反発し、毎週末ごとにソウルのど真ん中で大規模抗議集会を開いた人々でもある。文氏もあの集会に頻繁に参加し、彼らに推される形で大統領に当選した。

 その期待に文氏がどれだけこたえられるかが、今後、問われるであろう。もし、期待を裏切る結果が出れば、文在寅政権への支持は日に日に落ちていくことも当然、あり得る。

外交的にも「国らしい国」になれるか

 大統領選当時の文氏のキャッチフレーズは「国を国らしく。しっかりした大統領」だった。現在も相変わらず「韓国を国らしい国に!」と強調している。

 朴槿恵(パク・クネ)前大統領の親友で女性実業家の崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件に見られた不正腐敗が根絶されない韓国を、“まともな国”に立て直すというのが主眼で、主に国内問題を対象にした発言だ。

 ただ、最近の文氏の発言を振り返ってみると、外交的にも「国らしい国」であらねばという考えがうかがえる。欧米への初外遊を終えた後の「国益を最優先に考え、貫徹できるよう外交を多角化し、外交力を高めねばならない」という言葉が象徴的なものだ。

(続く)