安倍晋三首相は、内閣改造の焦点の1つだった新防衛相に、小野寺五典元防衛相の起用を決断した。

 南スーダンのPKO(国連平和維持活動)の日報問題をめぐり、防衛省・自衛隊は「戦後最大の危機」に直面した。朝鮮半島情勢が再び緊迫度を増すなか、小野寺氏は、国民の生命と財産を守る「実力組織」を立て直せるのか。

 「日本はここまで厳しい安全保障環境を経験したことがない。万が一のときは同盟国を巻き込んで力を借りないと、日本の領土と国民を守れない」

 小野寺氏は1日、千葉市のホテルで講演し、こう語った。北朝鮮が2回目のICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射し、ドナルド・トランプ米大統領が戦争の可能性を示唆するなか、外交・安保政策に精通する小野寺氏らしい現状認識といえる。

 今回の改造人事では、指揮管理能力の欠如が指摘された稲田朋美前防衛相と対立し、シビリアン・コントロール(文民統制)への不安が露呈した防衛省・自衛隊の立て直しは急務だ。

 安倍首相が熟慮して決断した人事を専門家はどう見るか。

 防衛問題研究家の桜林美佐氏は「小野寺氏の防衛相復帰に、防衛省・自衛隊は安心し、歓迎していると思う。ここ十数年の間で、小野寺氏は最も評判のいい大臣だった」といい、続けた。

 「自民党が政権奪還した2012年12月、小野寺氏は初めて防衛相に就任した。その後、土日などを利用して全国各地の部隊を視察して回った。通常は回らない、僻地(へきち)のレーダーサイトまで足を運んだ。

 迎える自衛隊は大変だったが、自衛官の士気は上がった。そうした信頼関係は残っている。防衛省・自衛隊の士気はまた高まるのではないか」

 小野寺氏が回った自衛隊の現場は150カ所以上とされる。民主党政権が壊した「日米同盟の絆」を修復するため、米軍関係者ともほぼ毎日連絡を取り合い、信頼を勝ち得たという。

 東日本大震災時の陸幕長だった火箱芳文(ひばこ・よしふみ)氏は当時、被災地・宮城選出の小野寺氏とも連絡を取り合い、対応に当たった。

 今回の抜擢(ばってき)について、「一連の問題で『制服組』と『背広組』、防衛省・自衛隊の現場が混乱したが、小野寺氏は現場にも中央にも精通しており、しっかり立て直してくれるだろう。PKOについても本質的な議論を再度、提起してほしい。

 朝鮮半島情勢が緊迫している。一瞬の隙も許されない。小野寺氏の手腕に期待したい」と語った。

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前回の防衛相時には省内の評判もよかったという小野寺氏=2014年4月