大日本主義の徒花 「安倍政治」に対抗するヴィジョンとは

 鳩山友紀夫の近著「脱 大日本主義」(平凡社新書)がなかなかの評判である。30日付毎日新聞の「今週の本棚」欄では、中島岳志が5段の大きなスペースで書評を書いていて、その結びの部分でこう述べている。

 「民進党は、相変わらず迷走中である。その最大の要因は、国民に訴えかける清新なヴィジョンの欠如にある」のだが、

 その「ヴィジョンがここにある。民進党は、鳩山内閣の挫折のプロセスを検証したうえで、理念の再提起を行うべきではないか。鳩山内閣は確かに失敗に終わったが、その理念までもが全否定されていいわけではない。未来に向けて有効な構想や政策が多く含まれている。……いまこそ必読の一冊だ」と。

 いつも辛辣なこの評者にしては、ちょっとビックリするくらいの褒め言葉であるけれども、私は共感する。中島は言う。

 「鳩山政権が長期政権になっていれば、いまの日本はどうなったろうか。……私たちは異なる現在を生きていたに違いない」

 確かに、鳩山政権はよろず下手くそではあったけれども、あんなふうに寄ってたかって叩き潰すことが、どうして必要だったのだろうかと、私もあの時代の空気をやや不気味なものを見るかのように思い返すことがある。

 タイトルが意味するのは、明治から150年、日本はずっと「大日本」を追い求めてきたが、それはもういい加減にして、石橋湛山の「小日本主義」や武村正義の「小さくともキラリと光る国」という理念の系列をくんで、中規模国家(ミドルパワー)としての成熟をこそ目指すべきだという提唱である。

 そこで何よりも重要なのは、時代遅れの対米従属からの脱却であり、その実体化のための米軍基地の縮減、地位協定の改定、東アジアにおける連携、そしてまた内にあっては、低成長経済の下での新たな分配政策でなければならない。

 そう考えると、安倍政権の対米従属・軍事強国路線、アベノミクスによる無理やりの成長追求路線というのは、大日本主義の最後の徒花なのだろう。とすれば、それに対抗する民進党は、鳩山ヴィジョンを座標軸として、ポスト安倍の新しい日本の生き方の提案を国民に訴えかけなければならないのではないか。

高野孟ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。

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鳩山友紀夫(由紀夫)元首相と辞任会見をした蓮舫氏/(C)日刊ゲンダイ